※あくまで、僕個人の意見です。意見は十人十色、それは違うと言われても困りますのでご了承ください。
甘草の副作用は偽アルドステロン症
これは、薬学部で念仏のように唱えて覚えさせられる項目の1つです
じゃあ、偽アルドステロン症って何?
と聞かれたら、国家試験前に命がけで勉強していた数年前の僕も答えられないと思います。
偽アルドステロン症が何かよく考えもせず、危ないような扱いをしていた当時の自分を戒めるためにも、今回の記事を書いてみたいと思います。
それは、本当に偽アルドステロン症は甘草の「副作用」なのかということです。
- 結論から言うと、甘草の偽アルドステロン症は
- 甘草1日量が2.5〜3gを超えるものは、注意が必要ですが
- 葛根湯は?と聞かれますが
- おまけ。【鉱質コルチコイドと偽アルドステロン症の詳細について】
- アルドステロンとは、高校生の生物で習う「鉱質コルチコイド」と同じものです。
- 鉱質コルチコイドの作用は、その名が示す通りに体内のミネラルバランスを調整するもので、
- 基本的に、人間にとって「低血圧・低血糖」は危険なものになります。
- 血圧に関わるミネラルは、ナトリウムとカリウムです
- ナトリウムを血中に増やせば血圧が上がって貧血でぶっ倒れずに済むので、基本的には血圧維持のためにナトリウムを回収する方向に働きかけます
- バランスが取れていればいいのですが、バランスが崩れて危険な状態は
- 血液中には、ナトリウムが多すぎる状況ですから、血圧が必要以上に上がります
- 塩や砂糖を外に出しておくと、やがて空気中の湿気を吸って、べちょべちょになります
- 血液の濃い塩分を薄めるために、水分がいっぱい血液中に増えることになります。
- 水分が体に過剰にあると、筋肉が痙攣しやすくなります。
- こむらがえり、まぶたのピクピクなど筋肉のけいれん、下半身のだるさなどは漢方では体内の水分バランス異常と考えて、利水の生薬を用いてこちらの治療も行います。
- 文献では、コルチゾールが代謝されてコルチゾンになるのを阻害(≒邪魔)するとあります。
- 要するに、まとめると
結論から言うと、甘草の偽アルドステロン症は
甘草の主な作用が強く出過ぎた状態
つまり、主作用が強すぎて副作用となすの状態であると考えています。
白虎加人参湯では、カゼをこじらせて布団をはぎたくなるような高熱で寝なあかんときに、知母と石膏で冷やし、その他の人参、コウベイ、甘草で水を体内に蓄えて、脱水を予防するために使います。
偽アルドステロン症の症状が出た例を見ていると、むくみをなんとかしてほしいと訴える人に対して芍薬甘草湯を1日3回満量で、1年近く飲ませていたり(もう、滅茶苦茶^^;)
と、本来の使い方をしていなかったり、訳のわからん使い方をしていたりと
使う側の無知が招いたものが多い印象を受けます。
加えて、長期間の過剰摂取により起こります。
甘草でなくとも、塩や砂糖であっても長期間・過剰摂取すれば病気になります・・・。
甘草1日量が2.5〜3gを超えるものは、注意が必要ですが
それは、芍薬甘草湯や桔梗湯になります。
芍薬甘草湯は頓服(=症状が出たときだけ飲む)、桔梗湯はカゼなどで短期間使うものであって、間違っても長期で飲むものではありません。
また、長期に使う漢方も、利水(むくんでいたら尿として出す、脱水なら体内に取り込む)の生薬が古人の経験則で配合されていたり、甘草の量が少なかったりと
副作用が出にくい設計になっています。
例)補中益気湯には白朮が、四君子湯には白朮と茯苓が、抑肝散加陳皮半夏や六君子湯、釣藤散には二陳湯として
古人も、甘草を大量に長期間に渡って使うことが体に良くないことを、経験則で知っていたように思います。
オリジナル煎じメインの漢方専門医院・相談薬局などの先生方は、この辺は熟知されているので利水の生薬をきちんと配合されるなどの工夫をされています。
葛根湯は?と聞かれますが
あれも長期で飲むものではなく、発汗一発療法などで一時的に使うものです。
当然、利水の生薬は配合されておらず、気軽に毎日、満量を飲んでいると偽アルドステロン症を起こす確率は上がると思います。
既にむくみがひどかったり、他に病気を持っていて薬を飲んでいれば注意が必要ですが
そこまで神経質になるのもどうかと思っています。
僕自身、かれこれ漢方を累計kg単位で数年にわたって飲んでいますが、偽アルドステロン症を出したことがありません。
麻黄の副作用で食欲が失せるとか胃が荒れるとか、熟地黄で腹が痛くなるとか、当帰でお通じがゆるいとか、そんなもんです。
西洋医学の薬をkg単位でのめば、何かしらの重篤な副作用は出ると思いますけど(笑)
神経質になりすぎることはないし、長く飲む分は利水の生薬を探してみるといいと思います。
これだけやと、なんか少ない気がするので、以下にアルドステロン関連について詳しく書いておきました。
結構長いので、お暇な時にでもお読みいただければ幸いです。
※あくまで、僕個人の意見です。意見は十人十色、それは違うと言われても困りますのでご了承ください。
☆今回も、最後までお読みいただきありがとうございました^^
おまけ。【鉱質コルチコイドと偽アルドステロン症の詳細について】
アルドステロン関連について書いていきます。
アルドステロンとは、高校生の生物で習う「鉱質コルチコイド」と同じものです。
ステロンという名前が示すように、ステロイドになります。
オンと名のつくものは、構造にC=Oのケトンの構造を持っています。
アルドというのは、アルデヒド基ーCHOのことです。
右から2つめ、五角形と六角形の間の「◀=O」がアルデヒド基です。
※こういう構造式は、場所によりHを省略していますので、右から2つめの◀=OのところはHが省略されたアルデヒド基です。
ちなみに、この、六角形や五角形の構造が4つあるこの独特な構造をステロイド骨格と言います。
ちなみにアルコールなど、〜オールと名のつくものは、構造にーOHを持っています。
女性ホルモンのエストラジオールもそうですね。
ジオールのジは英語のdi(英語読み;ダイ)ですから、2つのーOHを持っています。
このように名前から、構造を推測できます。
話を戻し、
人間の体ではステロイドホルモンが日々作られていますが、有名な
糖質コルチコイド
というものは、炎症を抑えたり血糖値を上げるように働きかけたりと内分泌において、大切な仕事をしています。
この糖質コルチコイドの人工品こそが、我々がステロイド剤と言って、主に炎症を抑える作用を目的に、塗り薬であったり、飲み薬であったり様々な形で薬として使っているものになります。
体で作られる糖質コルチコイド、通称「天然品」は、弱いながらも鉱質コルチコイドの作用も持ちます。
鉱質コルチコイドに炎症を抑える作用はないばかりか、以下にも書きますが、血圧が上がったりと、「治療上」はあまりいいことがありません。普段はめっちゃ大事なんですけどね。
人工品はその点を踏まえ、分子構造を考えて、特定の場所の構造を少し変えたりすることによって、余計である鉱質コルチコイドの作用を弱くするようにしています。
鉱質コルチコイドの作用は、その名が示す通りに体内のミネラルバランスを調整するもので、
基本的に、人間にとって「低血圧・低血糖」は危険なものになります。
とくに低血糖は、一時的な低血糖であっても、下がりすぎると昏睡状態になるくらい危険なので、糖尿病の薬、ことインスリン製剤などの使用には注意を要するのです。
低血圧の場合、めまいや貧血でぶっ倒れるなど、これもやはり良くないので
血圧や血糖値を下げすぎない方向に調整します
血圧に関わるミネラルは、ナトリウムとカリウムです
これは、薬理学などで勉強しますが、ナトリウム・カリウム交換系と言って
ナトリウムを血中に増やせば血圧が上がって貧血でぶっ倒れずに済むので、基本的には血圧維持のためにナトリウムを回収する方向に働きかけます
代わりに、カリウムが外に出ていくことになります。
これが、鉱質コルチコイドの作用です。
バランスが取れていればいいのですが、バランスが崩れて危険な状態は
血液が「低カリウム・高ナトリウム」の状態になります。
もし、このバランスが崩れている状態、つまり鉱質コルチコイドの働きが強すぎる場合
血液中には、ナトリウムが多すぎる状況ですから、血圧が必要以上に上がります
また、カリウムが少ないので「低カリウム血症」という状態になります。
塩や砂糖を外に出しておくと、やがて空気中の湿気を吸って、べちょべちょになります
これは、塩や砂糖を薄めようとする「浸透圧」の関係によるものです。
血液の濃い塩分を薄めるために、水分がいっぱい血液中に増えることになります。
これが、「むくみ」と言われる状況になります。
静脈は広がりやすく、血液を貯めれる性質があります。
重力の影響で、むくめば必ず下半身に影響が出ます。
水分が体に過剰にあると、筋肉が痙攣しやすくなります。
加えて、だるくなります。
こむらがえり、まぶたのピクピクなど筋肉のけいれん、下半身のだるさなどは漢方では体内の水分バランス異常と考えて、利水の生薬を用いてこちらの治療も行います。
芍薬甘草湯だけで、こむらがえりが治るわけではありません。
あの、ふくらはぎのひきつりは地獄の痛みなので、せめて目の前の症状を取って気分を楽にしてさしあげたいということで芍薬甘草湯が出ているイメージです。根本的な解決は別にはかる必要があります。
体内(腎臓)には、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドがくっつける場所があり、そこにくっついて初めて、オシッコから出ていく予定のナトリウムを、カリウムと引き換えに回収できるようになるのですが
本来は、特定の酵素で糖質コルチコイドが代謝(たいしゃ;構造が少し変わって、本来の働きをなくす)されて、糖質コルチコイドは本来の働きを失ってくっつくことができず、鉱質コルチコイドがくっつくいているのですが
甘草を大量にず〜〜〜っと摂っている(=慢性的な摂取)と、甘草の成分のグリチルリチン(と同レチン酸)が、その特定の酵素の働きを邪魔して糖質コルチコイドが代謝されなくなってしまい、
働きを失わずに済んだ糖質コルチコイドが必要以上に増えて、この場所にくっつくことによってナトリウムの回収の効果が強められて、先程書いたような症状が出てくることになります。
文献では、コルチゾールが代謝されてコルチゾンになるのを阻害(≒邪魔)するとあります。
ここで言う代謝は
コルチゾール(〜オール;アルコール)のーOHを、脱水素酵素である11βHSD2の働きでコルチゾン(〜オン;ケトン)のC=Oにするということで
脱水素とか酸化と呼びます。
たったこれだけで、性質が変わってしまうのです。
有名な話では、お酒のアルコール(エタノール)が酸化(水素原子を2つ抜く)された次の段階が、二日酔いの元凶のアセトアルデヒトで、これをさらに酸化して、お酢(酢酸)に変えるのと同じです。
要するに、まとめると
長期で大量に甘草を摂る
↓
↓
糖質コルチコイドを代謝する酵素の働きを、甘草の成分が邪魔してなくしてしまう
↓
↓
糖質コルチコイドがやたらと増える
↓
↓
ナトリウム回収の働きが強くなる
↓
↓
血液中にナトリウムが異様に増えるがゆえの症状が出る
ということです。
事件は会議室ではなく、腎臓で起こっていたのでした。